「マイケル・ムーア監督の映画、シッコ」

息子が一人暮らしを始めて2日目。


私の涙目とため息も少しおさまってきた、


息子から家事についての質問メールがちょくちょく入る、
今まで家の手伝いなんてほとんどしたこと無い子だから、
いざ、独りになると分からないことだらけ、
こんな日に備えて、
もっといろいろ教えておけば良かったと後悔する。


買ったその日に新品の自転車を盗まれたと、
涙顔の絵と共にメールが送られてきた。
さっそく、これかい。と親も子もガックリである。


気分を変えようと本当に久しぶりに映画鑑賞、
私の好きなムーア監督作品。
以前見た、9,11テロを扱った問題作
「華氏116」も素晴らしい作品で、
ブッシュ政権の欺瞞性を余すところ無く描き出していた。


今度の作品名「シッコ」は「病人」という意味と
「病的な変態野郎」という二つの意味があるらしい。
(このあたりがムーアらしい、うまさだ)


映画はぱっくり開いた傷口を、自分で縫う男性の姿から始まる。
保険加入していないので費用がかかるから、自己治療。


事故で指を2本切断した患者に医者は聞く、
「薬指は1,2万ドル。中指6万ドル、どっちにする?」
無保険の患者は安い方を選んで、中指無し。


保険が無く路上に放置される病人。


アメリカは全国民を対象にした国民皆保険制度が無い、
6人に一人、約15%が無保険で
毎年1,8万人が治療を受けられずに死んでいく。
WHOの調査ではアメリカの健康保険充実度は37位
先進国中でほぼ最低だ。


民間医療保険が主流となっているが、営利企業であり
利潤追求に重きをおいているので、
病気がちの人は最初から排除、太っていても痩せていてもダメ。
加入者に対する保険料給付は、なんだかんだといって
出来るだけ出し渋る。
(映画ではそのため手遅れになって死亡した事例が
紹介されていた)


こうして民間医療保険会社は莫大な利益を上げる、
政治家には沢山の献金と、天下り先の提供で口封じ。


なんともすさまじい世界ではないか。


アメリカとの対比で完全なる国民皆保険制度、医療費タダの国々
イギリス、フランス、カナダ、キューバが紹介されていた。


画面では安心しきって医療を受ける人々の幸せそうな顔。
いずれもアメリカ国民より平均寿命が長い。


アメリカが敵視するキューバで、
9,11テロの救出活動で病気になった人々を
無料で手厚く治療する場面には、
画面の登場人物共々、感動で涙する。
彼らはアメリカ国内では、満足な治療を受けられなかった人々だ。


世界の大国アメリカがこれでは、
アメリカ国民があまりにも気の毒。


この映画の効果あってか、次期大統領選では候補者がこぞって
公的医療制度の導入を公約に入れ始めたらしい。


日本は国民皆保険制度。タダではなく一部窓口負担あり、
しかし、保険料が払えなくて無保険者が増えてきている。
お金が無くて適切な医療が受けられない人たちの
存在が問題になっている。


これは国家として恥ずべき事態ではないか。


国民に適切な医療を保証するのが、国としての大きな責務だ。
医者の数も日本は先進国中ほぼ最下位だし、
医者も、国家予算も もっと増やしてほしい、
アメリカのような惨状はごめんだ。