大飯原発見学

8月25日(土曜日)、特定非営利法人 
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
の企画する大飯原発見学会に参加した。


総勢は50名ほど、バスをチャーターして大阪市内から
3時間余りかけて、おおい町に到着。


おおい町は日本全国の原発が停止している中、唯一2基
原発が稼動しており、今でも再稼動に反対する
抗議デモが首相官邸を中心として全国に広がっている。
再稼動を巡って、おおい町議会や町長の判断が全国の注目
を集めたことは、いまだに記憶に新しい。


現地では町会議員の猿橋氏が原発を巡る町の状況を説明
してくださった。
猿橋議員は7期28年議員を務めているベテランで、
原発を町に建設するかどうかのスタートラインから一貫
して反対姿勢を示してきた。彼以外にも慎重姿勢の議員
が3名ほどいたそうだが、再稼動の最終判断では結局
反対したのは猿橋氏一人という状況になってしまった
そうだ。


おおい町は平成18年に大飯町と名田床村が合併して現在
おおい町となった。
人口は約8800人で職業構成は農林業6,5% 
漁業1,6%  建設業15,9% 
電気関係10,4%


平成24年度予算案は一般会計が108億6800万円。
予算総額は137億円。歳入は町税が40億1600万円。
原発関連収入は歳入の58%に当たる63億1500万円。
生駒市は人口12万人で一般会計は約330億円)


猿橋氏によれば、原発再稼動を決定した時は5000件
もの抗議が寄せられ数日間担当職員は仕事にならなかった
そうだ。また当地への視察も激増し、私たちも大飯原発
PRセンターへの視察が先約があったためできず、
遠くの美浜原発PRセンターまでいくはめになった。


大飯原発は陸から見えないので遊覧船に乗って海上からの
見学となった。
山間の急斜面地を切り開くように建っており、
折からの太陽にまぶしく輝いていた。津波対策のブロック
が11メートルほどの高さに整然と積み上げられていたが、
東日本大震災では世界一といわれたビルのごときスーパー
堤防が根こそぎ津波でなぎ倒されたというのに、
こんなブロックを積み重ねたところで何の意味があろうか。


そして隣接する山は土砂崩れの危険を想像させる。


他の参加者からの情報によれば以前は原発敷地内も見学でき
た時もあったようであるが、今はそれどころじゃない、
海から遠巻きに見るしかない。


原発は別として、おおい町は風光明媚で大変美しいところ
だった。海は深い入り江となっているのでまるで湖のように
波が静かで、しかも水は美しい。緑豊かで暖気性の珍しい
植物が昔から生息している。砂浜も美しく設備の整った
海水浴場になっていた。
オートキャンプ場も整備されており、おしゃれなコテージ
やバンガローが森の中に見えている。
魚類も豊富らしく海釣り公園もあった。
本格使用のアリーナも整備。



海辺には「うみんぴあ」ホテルがあってすっきり小粋な外観、
町が民間に営業を50億で委託したもので(PFI方式)
稼働率が30%という、普通は50%が損益分岐点というから
大赤字か。


同じく海辺に「エルガイアおおい」という体験ミュージアム
が設置されバーチャル体験ができる。
親子で楽しめる「子ども家族館」も近くにあって、いずれも
デザイン性が高く、景観にマッチした建造物となっている。


付近の山では自然の地形を利用して「きのこの森」という
テーマパークがあった。
これがまた何やら楽しそうな所である。


このように大飯原発周辺地域は通り過ぎるには惜しいような
楽しみが満載のところで、こういった所からは原発は全く
見えない。


町の中心部には180名収容の小劇場があって地域の文化振
興を担っているのだろう、野球場の横では10億円掛けて
サッカー場を作る準備がされていた。
小学校は建築当初は100名の児童がいたが今は60名余り、
26億かけて建設された小学校はすてきな外観だ。


8800人3200世帯の自治体にしては公共施設が整いすぎる
くらいで、これならもっと人口が増えても良さそうなものだが
どうなんだろうか・・・


だけど立派な公共施設はランニングコストもかかる、その辺の
事情も聞きたかったがとにかく時間が足りなかった。


この立派な施設も原発マネーがあってこそ、これだけ財源が
潤えばなかなか原発反対とは言いにくい風潮であろう、
その中にあって一人反対を貫いてこられた猿橋氏とはなんと
勇気のあることか。聞いてみれば彼は町議会で唯一人の
日本共産党の議員だった。そこで納得。議会では孤軍奮闘でも
党や支援者の強い支えがあるのだろう、猿橋氏は特にこれから
は貴重な存在であるので、ご苦労だけどおおい町議会で末永く
頑張ってもらいたい。そして多く発信してもらいたい。


猿橋氏から頂いた資料から知ったことだが、原発の立地対策
費として毎年1千億円を超える税金が自治体へ流れるのであ
るがこの対策費は豪華な施設などのハコモノばかりに目を
奪われがちだが、最近は福祉や医療サービス等のソフト面でも
活用されている。
たとえば、09年度 おおい町ではコミュニティバス運行、
福井県では不妊治療助成、高浜町では出生祝い金、
敦賀市では就学前乳幼児の医療費助成・・・
04年度 青森県佐井村では霊柩車購入なんていうのもあった。


これだけ原発マネーが市民生活に深く浸透していては、
なかなか断ち切るのは難しかったであろうが、福島原発事故
を教訓として原発マネーから脱却していく覚悟が求められる。


おおい町を後にして猿橋氏とも別れ、美浜原発に向かう。
車中から臨む海はあまりにも美しく、8月下旬だというのに
海岸は海水浴客で賑わっていた。
美浜原発は陸地からも良く見える位置にある、3基の原発
全て止まっているがいずれも稼動年数が古いので、このまま
廃炉にすべきであろう。
しかし、再稼動にむけての新たな安全対策の説明が
担当者から長々とされて、なんかもう気持ちが萎える。


見学者から厳しい質問が次々出されたが、こういう場では
ふさわしくなかったのか満足な回答は得ることは無かった。


生れて初めて直に目にすることができた原発


一端事故が起きれば取り返しのつかない危険性をはらんだ
この施設が立地する地域はあまりにも美しく、おぞましい
事故の悲劇も美しさの陰に隠れてしまいそうであるが、
私達は福島の悲劇を忘れることなく、全ての原発廃炉
しなければならないと、あらためて強く感じた。